ビングループ、4月にEVタクシー参入へ新会社設立

東南アジア > ベトナムレポート
Akihiro Komuro
小室 明大

ビングループは4月に同国でEVを使ったタクシー事業に乗り出す。創業者会長が95%を出資し、新会社を設立した。まずは首都のハノイでサービスを始め年内に全国に広げる計画。自社製品の認知度向上にもつなげる。新会社GSMグリーン・アンド・スマートモビリティーの資本金は3兆ドン(約170億円)。EVを使ったタクシーのほか、EVや電動バイクを他のタクシー会社などに貸し出す事業を展開する。GSMではEV1万台と電動バイク10万台を使用する予定だ。

出典: 日経

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中国・長安汽車、タイにEV新工場 380億円投資

東南アジア > タイレポート

タイ投資委員会(BOI)は20日、中国自動車大手の長安汽車集団がEVなど電動車の新工場をタイに設けると発表した。投資額は98億バーツ(約380億円)で、数年内に竣工するもようだ。当初の生産能力は年10万台で、車載電池なども製造する。タイ政府はEVの現地生産を促す奨励策を設けており、中国EV大手の投資が活発化している。

新工場ではEVのほか、HV、PHVなど電動車を中心に生産する。タイ国内向けに加え、東南アジア諸国やオーストラリア、南アフリカなどにも供給する方針だ。

長安汽車は中国の車大手で4番目の規模を持ち、2022年は200万台以上の新車を販売した。マツダとも合弁企業を設けており、中国で電動車投入を強化している。今後は中国以外でも電動車投入を進める予定で、今回の投資はその一環となる。

タイでは中国EV大手のBYDも東部ラヨーン県に完成車工場を設ける。24年に完成し、乗用車で年15万台の生産を見込む。長城汽車も同年から現地生産を予定する。タイ政府は22年、EV生産を促す奨励制度を導入し、多くの中国の車大手が活用を進める。

出典: 日経

PSR 分析: 中国自動車メーカーの「BIG 5」の1社である」Changan Automobileは複数の海外自動車メーカーと合弁事業を展開している。彼らのタイ進出は、現地における中国勢の存在感をさらに高めることになるだろう。SAIC、BYD、GWMなども進出し、これまで日本勢の牙城であったタイに切り込もうとしている。同スペックでの日本車と中国勢の比較をすればコスト勝負では中国勢が優勢になるだろう。これまでサービス網を広く展開し、アフターサポートを含めた日本ブランドの信頼性が中国勢の攻勢に対してどう立ち回るか、が焦点になる。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

現代自、ソフト更新で稼ぐ 1.9兆円投じ課金モデル構築

極東 > 韓国レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

現代自動車が、自動運転などに必要なソフトウェア開発に本腰を入れている。2030年までに18兆ウォン(約1兆9千億円)を投じる方針を固め、開発体制の構築やM&A(合併・買収)に乗り出した。世代交代に伴う戦略転換で過去最高益を達成した現代自。顧客が車の購入後に機能を追加できるソフト分野でさらなる収益力向上を狙うが、人材獲得が当面の課題となる。

2023年以降に発売される新車種を対象に、ネット経由で最新ソフトに更新する「オーバー・ジ・エア(OTA)」機能を標準搭載する。2025年までに起亜自動車も含めた全車種にも広げ、スマホのアプリストアのような多様な機能をダウンロードできるプラットフォームを構築。機能更新に応じて課金する仕組みを確立する方針だ。まずはカーナビなどコンテンツ、オーディオや照明、遠隔操作機能などを導入し、その後は自動車保険の契約など周辺領域にも広げ、顧客の要望に応じたサービスの多様化・高度化を進めるという。

課題は、ソフト技術者の確保だ。韓国ではサムスン電子やネイバー、カカオといった大手が優秀な技術者を求め、高額報酬を提示して争奪戦を繰り広げている。労働組合の影響力が強く、報酬が均一的な現代自は十分に採用できずにいる。

出典: 日経

PSR 分析: 自動運転やCASEにとってある意味必然ともいえる自動車のスマートフォン化をさらに加速させる動きだ。ソフトウェアによるサブスクリプション型のビジネスモデルはテスラがすでに先行しているが、他の自動車メーカーもそれぞれのやり方でこのトレンドを追従している。大手の動きは以下の通り。

現代自動車2030年までにソフトに1.9兆円投資 課金ビジネスモデル構築
トヨタグループ全体のソフトウェア技術者を18,000人体制に増強
ホンダ2030年までにソフトウェアと電動化に約5兆円を投資
VW内製のソフトウェア基盤に2030年までに最大4,000万台を接続
ステランティス2025年までに60~90億ドルユーロをソフトウェアに投資
GM2030年の売上高目標2,800億ドルの約3割をソフトウェアで稼ぐ

開発の速度を速めるためには人材の確保が急務だが、そう簡単にはいかない。ソフトウェアの仕事の進め方は「アジャイル開発」と呼ばれる体制が主流であり、これは頻繁に問題を修正していくことで品質を向上させようというものだ。この手法は従来の上意下達型のピラミッド構造である自動車メーカーの仕事の進め方にはなじみにくいものだ。こうした新しい環境整備が現代自にとっては急務になる。

ソフトウェアの品質が自動車の価値を左右する時代がまもなく訪れる。これはまだ人類が経験していない領域であり、スペック、デザイン、価格とは別の新たな評価軸が登場することを意味する。

ユーザー目線で考えると、ソフトウェアに起因した事故や問題が起こった場合、その責任を誰が担保するのか、という点が気にかかる。もちろんそうしたことが起こらないことが前提だが、そうした面での法整備もこれから各国で進められていくのかもしれない。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

2023年にEV購入補助金を導入、販売促進へ

東南アジア > インドネシアレポート
Akihiro Komuro
小室 明大

インドネシアは、2023年からEVの購入を促すため補助金制度の導入を計画している。2025年までにEV利用者を250万人とし大気汚染の軽減を目指す。今回のEV購入の補助金制度はジョコ・ウィドド大統領が過去1年間に導入したEV政策のリストに追加される。ブディ・カリャ・スマディ運輸相は、政府が内燃機関車の改造に対する補助金も検討していると明らかにしたが、労働集約的な自動車産業に大きな変化をもたらすため、政府はこの計画を慎重に検討しているという。運輸省は韓国の現代自動車や中国のBYDといったインドネシアの既存自動車メーカーにアプローチし、ボルネオ島の新首都のためのEVエコシステムを構築する予定だという。

EVシフトの強化の背景には、インドネシアがバッテリーに使用されるニッケルの世界最大の生産国であり、最終的にニッケルの原材料輸出を全てやめることで同国がバリューチェーン上でより付加価値の高い部分に進みたいという目論みもある。

政府は今年はじめ、すべての国家機関に電気自動車への移行を命じた。国営電力会社PLNに対しては、4年以内に電動バイク200万台と電気自動車50万台の目標を達成するために充電スタンドを増設するように指示した。

インドネシア政府は、公共交通機関が5年以内に完全に電化されることを目指す。運輸省のデータによると、10月3日現在、インドネシアには22,942台が電気オートバイ、4,904台の電気自動車が利用されている。

出典: kamobs.com

PSR 分析: インドネシアのEV政策がかなりアグレッシブに進められている。現時点ではまだEVの普及率は低いレベルに留まっているが、これらの政策の後押しを受けて今後数年で飛躍する可能性を秘めている。2輪にもEV購入の補助金が策定されるということだ。

都市部での渋滞とそれによって引き起こされる大気汚染は非常に深刻なレベルにあり、こうした政策をうけて市場がどのように反応するかが大事になる。これまで様々な政策をもってしても解決できなかったこの問題をEVが乗り越えられるか、試されている。私は目標達成がかなり厳しいと見ているが、いずれにしても現状のままにはとどまらず普及は進んでいくだろう。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

韓国EV電池3社の躍進

2020年1月に販売されたEV搭載バッテリー容量基準で、韓国バッテリー大手3社(LG化学、サムスンSDI、SKイノベーション)のシェアは合わせて30.8%となり、初めて30%を超えた。EV用バッテリーの総電力量ランキングでは、中国のCATLが3年連続で1位を占めているなか、LG化学が3位、サムスンSDIが5位、SKイノベーションは10位を記録した。SKイノベーションは初めてトップ10の仲間入りを果たした。ただ、1位のCATLと2位のパナソニックは、市場平均を大きく上回る増加率を記録している。現状はCATLとパナソニックが、グローバルEVバッテリー市場の半分以上を占めており、韓国メーカーにとっては今後この2社の勢いを克服するための競争力や市場戦略が求められている。

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ソニーがEVのSUVを公開、ホンダとの協業も発表

極東 > 日本レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

ソニーグループは3月5日、EVの試作車「VISION-S」のSUVを国内で初めて一般公開した。センサー、音響、映像技術などソニーが得意とする技術を集めた。4日にはホンダとの提携を発表しており、両社が出資する新会社でEVを共同開発し、2025年の発売をめざす。

ソニーは2020年に発表したセダン型の試作車に続き、米国で2022年1月に開かれたデジタル技術見本市「CES」でSUVを発表。

サイドミラーには鏡面がなく、車の前後も含めて40個近いセンサーから集めた映像やデータを使って安全性を高めるという。ダッシュボードはディスプレーが3枚ならび、運転情報に加えて映画などのコンテンツを映せる。車内はソニーの音響技術を駆使し、臨場感のある音楽を楽しめる。

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日野自動車エンジン不正、2003年以前から 対象56万台に

極東 > 日本レポート:
Akihiro Komuro
小室 明大

日野自動車は、3月に公表したディーゼルエンジンの排ガス数値の改ざんについて、少なくとも2003年以前から行われていたと発表した。従来は不正開始時期について2016年秋以降と説明していたが、より長期間にわたって不正が続けられていた。対象車両も判明しただけで2009年以降で56万7千台にのぼり、これまで公表していた約12万台から大幅に拡大する。2016年、国土交通省から求められた排ガスや燃費試験を巡る実態調査に対して虚偽報告していたことも明らかにした。

出典: 日経

PSR 分析: こうしたネガティブなことをテーマにしたくはないが、この問題は看過できない。中大型トラック分野で国内トップシェアを持つ日野の不正が業界に与えるインパクトは大きい。いすゞは日野のエンジンを採用しているバス4車種の出荷を停止した。自動車の分野に限らず、タダノのクレーンや、コベルコの油圧ショベル、日立建機のホイールローダー、加藤製作所のラフテレーンクレーンなども、この問題が明るみに出たことで出荷停止を余儀なくされている。

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現代自とLGエネ、米国に電池合弁工場 6000億円投資

極東 > 韓国レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

韓国の現代自動車グループとLGエネルギーソリューションは5月26日、米国で車載電池の合弁工場を建設すると発表した。総投資額43億ドル(約6000億円)を折半で負担し、2025年末の稼働を目指す。米国のEV補助金の条件が明らかになる中で、現地での投資計画が相次いでいる。

米ジョージア州のブライアン郡に新工場を建設する。生産能力は標準的な年30ギガワット時で、EV約30万台分の電池を供給できる。現代自が建設中のジョージア州のEV専用工場のほか、起亜のジョージア工場と現代自のアラバマ工場にも供給する。重量の大きい車載電池は運送コストがかさむため、3工場に供給しやすい同地に決めた。

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インドネシア、車産業の盟主狙う EVシフトでタイは防戦

東南アジア > インドネシアレポート

世界的なEVシフトの中、インドネシアが新たな盟主の座をうかがう。すでに乗用車生産台数ではタイを抜き、EVの本格生産も先行して始まった。タイは自国生産と販売補助金をセットにしたEV優遇策を打ち出すなど東南アジアの自動車生産ハブの地位死守に動きはじめた。

インドネシア最大の強みが車載電池で使用されるニッケル資源の豊富さだ。世界最大の埋蔵量ともいわれ投資が急増している。同国政府は4月、米Fordが参画するニッケル生産事業への投資について、独VWも参画を検討していることを明らかにした。インドネシア政府はEV振興政策を継続的に打ち出す。4月から、一部のEVにかかる付加価値税を11%から1%に引き下げた。原材料や労働力などの現地調達率が40%以上の車両を対象にし、消費と同時に国内生産を促す狙いだ。ただ、販売店から制度の使い勝手への不満があることから早期の見直しも検討している。政策も機動性を高める構えだ。

政策に呼応し世界大手の動きも活発だ。韓国の現代自動車や中国のSGMWはすでに2022年にインドネシアでのEV生産を始めた。世界で工場用地を探している米テスラにも秋波を送る。韓国のLGエネルギーソリューションは現代自と電池工場を建設中で2024年にも稼働する見通し。車載電池世界最大手の中国・CATLも電池工場を新設する。

「インドネシアに車生産のハブを奪われるかもしれない」。タイの産業政策に関わる関係者は危機感を隠さない。タイは1960年代からトヨタ自動車など日本車メーカーが生産を開始し、日本車の勢力拡大とともにサプライチェーンを含めて産業集積が進んだ。オーストラリアや中東、アフリカなど向けの輸出拠点となってきたが、世界的なEVシフトを背景にエンジン車で培った勝利の方程式が通用しなくなってきた。

タイ政府関係者は、これまでタッグを組んできた日本メーカーについて「動きが遅い」と指摘する。タイでは日本車人気は依然高くEVへの期待も高い。国内でEV普及期を迎えた中、日本車のEV商品化の遅れがタイの産業成長の足かせになる可能性もある。

タイ政府は2030年に新車生産の3割以上をEVとする目標を掲げ、2022年2月に新たな優遇策を打ち出した。最大の柱が将来的に現地生産するメーカーのEVを対象に購入時の補助金を最大15万バーツ(約60万円)支給する政策だ。物品税も乗用車について8%から2%に減税する。世界的に商用や個人向けに人気でいまだにタイが優位のピックアップトラックは免税になる。

タイ政府は2023年から5カ年の投資戦略を発表し、FCVの生産などを対象に10〜13年にわたる免税措置を適用すると明らかにした。バイオ燃料の生産企業も減税の対象になる。トヨタは2022年12月、タイ財閥最大手のCPグループと共同で家畜の排せつ物から発生するバイオガスを活用した水素を製造し、FCVへの利用も検討すると明らかにした。EVだけでなく新エネルギー車全体に手を広げ、先行したい考えだ。

タイとインドネシアの競争は激しさを増す。

出典: 日経

PSR 分析: 東南アジアにおける最大市場であるインドネシアとタイの競争は、東南アジア全体の競争力を後押しすることに繋がる。両国の間には文化的にも大きな違いがあるが、どちらも国内人口の多さと平均年齢の若さがあり、市場としても強い成長が期待できる。特にインドネシアの鉱山資源は世界から注視されており、インドネシアもこれを自覚し、より戦略的な政策を通じて自国の発展を加速させたい考えだ。日本車ブランドと歴史的にも関係が深いタイではこうしたインドネシアの動きの後塵を拝すことなく、今後も成長を続けていけるかが懸念されている。急に産業構造を変えることはできないことから、しばらくは減税で消費者市場をサポートし、補助金で投資を募るというスタンスを続けていくだろう。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

日立建機、遠隔ショベル2023年度に発売 一般土木現場向け

極東 > 日本レポート
Akihiro Komuro
小室 明大

日立建機は2023年度中に遠隔操作に対応する中型の油圧ショベルを発売する。宅地造成や河川の工事などで、建機に乗り込まずに作業員が操作する。工事現場で人手不足により需要が高まっているとみて、普及台数が多い中型で導入する。

主に車体重量が10〜30トンクラスの油圧ショベルを対象とする。遠隔操縦に対応できる車体を用意し、日立建機が顧客と相談しながら必要な遠隔操作用のコントローラーや映像システムなどを搭載する。

これまで、ゼネコン大手が独自に遠隔操作できるよう油圧ショベルを改造する事例はあった。日立建機は自ら遠隔対応にすることでアフターサービスなどをしやすくする。今後、遠隔操作に加えて自動化に対応する同クラスの油圧ショベルも発売する計画だ。

参考: 日経

PSR 分析: 筆者は世界最大の建機展示会CONEXPO2023を視察してきたが、Trimbleをはじめ多くの遠隔操作システムの展示があった。複数の大型モニタとコックピット、操作用のジョイスティックなどで構成されたシステムを用いて、インターネット経由で遠隔地にある建機を操作する仕組みだ。こうしたシステムは通信大手が開発を主導し、建機メーカーへの導入を狙ったものが多かった印象がある。

今回日立建機はこうしたシステムを自社のサービスとして顧客に提供する。人手不足が深刻な現場ではこうした省力化に貢献する仕組みは需要が高い。無人化は建機業界にとっては究極の目標だが、まずはこうした遠隔操作システムによって、複数の現場を1か所から運用することが第一歩になるだろう。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト