東南アジア > ベトナムレポート
Akihiro Komuro
小室 明大

ビングループは4月に同国でEVを使ったタクシー事業に乗り出す。創業者会長が95%を出資し、新会社を設立した。まずは首都のハノイでサービスを始め年内に全国に広げる計画。自社製品の認知度向上にもつなげる。新会社GSMグリーン・アンド・スマートモビリティーの資本金は3兆ドン(約170億円)。EVを使ったタクシーのほか、EVや電動バイクを他のタクシー会社などに貸し出す事業を展開する。GSMではEV1万台と電動バイク10万台を使用する予定だ。

出典: 日経

PSR 分析: ビンファストは2019年に本格的にEV生産を開始してから3年以上が経った。当時ベトナムの国内自動車市場全体が40万台程度である中で、25万台の生産能力をもつ工場を立ち上げた後は、その社名の通り想像を絶するスピードで事業展開してきた。2021年にはビンファストの販売台数は35,700台に到達し、わずか2年で総市場の約9%を占めるまでに至った。2022年8月には、主力であったガソリン車の生産を年内に停止することを発表し、EVに資源を集中させ、欧米市場などグローバルに展開する戦略を追求する方針を示した。欧州や米国にも積極的に進出している。

彼らのビジネス規模はグローバルで見れば現状では小さなプレイヤーだと言わざるを得ないのかもしれない。だが他の自動車メーカーとは異なり、ビンファストの親会社であるビングループは、不動産業を軸に、教育関連、農業、ヘルスケアなどの多角的展開でベトナムを代表する財閥になった。今回発表されたタクシー事業も、彼らのそうした多角的で柔軟なビジネススタイルが早期に実現させたと言っていい。自動車メーカーは自動車を製造して販売することが軸であることは言うまでもないが、彼らのより柔軟で未経験の事業や新たな市場を積極的に開拓しようとする姿勢には、他の自動車メーカーにも参考にする価値があるはずだ。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト