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Akihiro Komuro
小室 明大

ソニーグループは3月5日、EVの試作車「VISION-S」のSUVを国内で初めて一般公開した。センサー、音響、映像技術などソニーが得意とする技術を集めた。4日にはホンダとの提携を発表しており、両社が出資する新会社でEVを共同開発し、2025年の発売をめざす。

ソニーは2020年に発表したセダン型の試作車に続き、米国で2022年1月に開かれたデジタル技術見本市「CES」でSUVを発表。

サイドミラーには鏡面がなく、車の前後も含めて40個近いセンサーから集めた映像やデータを使って安全性を高めるという。ダッシュボードはディスプレーが3枚ならび、運転情報に加えて映画などのコンテンツを映せる。車内はソニーの音響技術を駆使し、臨場感のある音楽を楽しめる。

VISION-Sは犬型ロボット「aibo」などを手掛けたチームが開発した。ソニーはホンダと年内に共同出資会社を設立し、2025年の初代車種の発売をめざして改めてEVを開発する。ブランド名などは未定という。販売も新会社が担い、製造はホンダに委託する予定だ。

出典: 日経

PSR 分析: CES 2020でソニーが初めてコンセプトEV「VISION-S Prototype」を発表した時、あくまでもコンセプトモデルであり量産はしないと言っていたが、Sonyのブランド下で発表されたこのモデルは大きな注目を集めた。今回CES2022で発表された「VISION-S 02」はその第2弾であり、世界的なトレンドとなっているSUV人気が背景にある。

ソニーが得意としている分野でもある音響技術を駆使し、臨場感のある音楽を楽しめる。さらに通信技術分野においても、Vodafone傘下の企業と提携して、5Gに対応したネットワーク通信も視野に入れている。端的に言ってソニーはかなり本気でモビリティ開発に取り組んでいる。

ソニーはホンダと昨年12月から協業を検討しはじめ、2月に合弁会社を設立した。従来の日本企業にありがちな、充分に時間をかけて検討するという動きからすると、非常に速いスピード感で実現したものだ。変化が早いモビリティ業界の動きを反映している。

ホンダにとってこれはあくまでモビリティの新たな形を模索するというVision-Sのプロジェクトの協業であり、これまでホンダが手掛けてきたEV戦略の根本的な方針転換を意味するものではない。だが、センサーやレーダーの技術を磨いてきたソニーとの協業でホンダが得るものは大きいだろう。ソニーにとっても、安全で長い期間使用される自動車を製造するための知見を得られるだろう。ホンダはすでに「新車販売のすべてを2040年までにEVか燃料電池車にする」と明言している。

従来から述べている通り、自動車メーカーはこれまでのやり方を続けていくだけではこの激動の変化を乗り越えられない。異業種企業の自動車業界への参入は多数報じられているが、世界的にもブランドのネームバリューが高いソニーとホンダの協業が果たしてどのようなかたちで市場投入されるのか、続報が待たれる。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト