ホンダ、個人用電動二輪の発売を決定

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ホンダはモーターで動く電動二輪車の個人向け商品を2023年内にも日本で発売する。一般向けの国内発売は初めて。電動二輪全体では2025年までに世界で10車種以上を出す予定だ。中国やインドなどを中心にペダル付きや電動自転車を含めて全体で販売を増やす。販売台数は2030年に2021年比で20倍以上となる世界350万台に高める計画で二輪車でも電動シフトを急ぐ。

3月17日、電動スクーター「EM1e」を日本初公開した。航続距離は約40kmで交換式電池を採用する。排気量50㏄程度のガソリン車のスクーターより価格は割高になる見通しだ。足でこぐことができるペダルを備える「モペット」や、モーター付き自転車5車種を2024年までに中国や東南アジア、欧州、日本で売り出す。2024年から2025年にかけては電動バイクで5車種を追加する。

電動二輪は車載電池が高価で、現状では生産コストが内燃機関と比べて5割以上高い課題を抱える。ホンダは世界での販売規模をまず2026年までに100万台に引き上げる。2030年にはさらに350万台まで拡大する計画だ。ただ、新興国での内燃機関の需要は根強く、2030年までは年2千万台程度の二輪ガソリン車の生産能力を維持する構えだ。

参考: 日経

PSR 分析: ホンダも電動モデルを一般消費者市場に投入することになった。ヤマハはすでにE-Vinoを個人向けに販売している。ハーレーは電動二輪部門を分社化して投資を集めている。インドのヒーローは2022年に電動二輪VIDAをリリースし、米国企業と協業して新製品の開発を行っている。各社とも電動二輪について非常に意欲的だが、普及にはまだまだ課題が多い。先行者事例としては台湾のGogoroがバッテリー交換ステーション網を整備したことでうまくやっている。今回発表されたホンダのEM1eも交換式のバッテリーを1個搭載しており、使用後にバッテリーパックを持ち帰って自宅のコンセントで充電することで、翌日には満充電の状態で走り始めることが可能だ。持ち手が付いているので持ち運びは楽そうに見えるが10.3kgの重さは女性に受け入れられるか微妙なところだろう。台湾のようなバッテリー交換ステーション網の普及については始まったばかりであり、都市部での充電ステーションの普及はまだまだこれからだ。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

ベトナム電動二輪のDat Bike、東南アジアへ

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ベトナムの電動バイクメーカーDat Bikeが530万ドル(約6億9000万円)を調達したと発表した。これにより、2019年に創業したDat Bikeの調達総額は1000万ドルになった。今回調達した資金は技術への投資や増産、ベトナム北部、中部、南部の主要都市への事業拡大、優秀な人材の採用に振り向ける。

Dat Bikeはまずはベトナム国内で、近い将来には東南アジアで、環境に配慮した移動手段の普及を目指すテックスタートアップだ。同社の強みはガソリンエンジンのバイクと比較した場合の電動バイクの性能の良さにある。速度制御装置やバッテリーなどの主要部品を社内で設計、製造する垂直統合によってこれを実現している。現在は2つの製品を販売している。

2019年に発売した「Weaver」は出力が5kWと同価格帯の大半の電動バイクの約3倍、航続距離が100キロメートルと約2倍に上るという。

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二輪4社、電動バイクのバッテリー仕様共通化

ホンダ、ヤマハ発、スズキ、川崎重工業の国内二輪メーカー4社は3月26日、電動バイクのバッテリー仕様を共通化することに合意したと発表した。着脱式の交換バッテリーを共通化することで利便性を高める。今後整備していく充電器も標準化する。

小型スクーターでは、車体が小さいため航続距離を延ばすためのバッテリーの大型化が難しく、充電の頻度が高い。着脱式ならバッテリー交換所で充電済みのものと交換しながら走れるため、利便性も高まる。

出典: 日経

PSR 分析: 2019年4月に4社は協議体を設置してバッテリーの共通化について議論してきた、その結果共通化に合意したことはひとつの成果だ。VHSなのかベータなのか、というような仕様乱立による混乱を防ぐという意味でもこれは最低限必要な到達点だった。また、4社が合同で何かを成し遂げるというのは過去に例が無く、その意味でも有意義だったのかもしれない。

バッテリーの構造、特性、保護回路、充電に関する通信プロトコル、さらに交換インフラとなるステーションに関する規格が合意されている。ただし、大きさ、重量、容量、形状などは協調領域の範囲外となり各社ごとの対応、つまり競争領域となる。

今回の合意は、二輪のうち原付一種・二種向けの交換式バッテリー(と交換ステーション)に関する部分だ。中型・大型バイクの電動化については、4社ともにこれまでどおり技術開発・商品開発を続ける。

正直な感想を言えば、この合意形成には2年かかっており、これはあまりにも時間がかかりすぎている。台湾のGogoroやKYMCOのIonexなどはすでに多くのEVバイクをリリース、充電ステーションも都市部中心に普及し、すでに生活の足として機能している。国際的な競争が激化する中で、従来の日本式のスピード感では対応できないケースが増えていくだろう。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト

ホンダ、ビジネス電動バイクを発売

ホンダは、交換式バッテリーを使用したビジネス用電動三輪スクーターの市販予定車として「GYRO e:」「GYRO CANOPY e:」を発表した。これにより、2020年4月より法人向けに販売しているビジネス用電動二輪車「BENLY e:」とあわせてHonda e: ビジネスバイクシリーズとして展開していく。

GYROシリーズは配達などのビジネス用途で多く活用される。安定性を高める前1輪、後2輪の3輪仕様で、少しの雨ならば平気な屋根とワイパー付き仕様「CANOPY」もある。

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郵便配達バイクを電動化、ホンダの新たなる挑戦

郵便配達業務用として、ホンダの電動バイクが2020年3月までに200台、2020年度中に2000台程度導入される。郵便配達用のバイクは全国で約8万5000台が走っているが、すべてがホンダ製である。3輪のモデルもあるが、そのほとんどがスーパーカブだ。雪の降る地域でも故障せず毎日頼もしく走る頑丈さに定評がある。そんな偉大なモデルが務めてきた郵便配達業務を、これからは電動バイクが担っていく。まずは走行範囲の少ない都内や首都圏、地方の政令指定都市などに配備する計画とのこと。郵便配達用電動バイク、ベースとなるのはビジネス用電動二輪車ベンリィeシリーズで、ホンダは法人向けに2020年4月に販売開始する。電圧48Vのリチウムイオンバッテリー2個を直列に接続させた96V系システムで、充電はバッテリーを車体から外して専用充電器でおこない、約4時間でゼロの状態から満充電になる。

最高出力3.8PSを発揮し、最大積載量を積んだ状態で、傾斜12度の登坂性能を実現した。航続距離は、ベンリィe:Iが87km、ベンリィe:IIが43kmだ。ホンダ関係者によれば、配達範囲を考慮すると1日稼動可能だが、昼休みに一旦郵便局に戻ってくる場合がほとんどなので、電池残量がもし減っていたならそのときバッテリー交換すれば心配ないとのこと。バッテリー残量は、メーターパネルで絶えず目視で確認できる。

出典: レスポンス

PSR 分析: 全国で稼働する郵便配達用バイクはおよそ85,000台で、2020年度中に2,000台が追加されれば、およそ40分の1が電動バイクという構成となる。ランニングコストは非公開ながら、オイル交換不要なことや電気代はガソリン代のおよそ半分とのことで、コスト面でも導入の効果はありそうだ。

電動バイクのみならず、電動四輪車を含むEV全般の普及に対し障壁となっているのは、「充電をどうするのか」という問題だ。もしこのトライアルを経てEVバイクが郵便局に全国的に導入できれば、それは同時にバッテリーを交換できるスポットが全国に配備されることを意味する。郵便局でのバッテリー交換を一般に開放できれば、現状で約23,800か所ある郵便局がEVバイクにとってバッテリー交換のインフラになり得る可能性を秘めている。すでにホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4社による電動二輪車用交換バッテリーコンソーシアムが設立されている。そこでEVバイクのバッテリーの仕様を含めた在り方について議論されているということだ。今回ホンダが発表したモデルが4社共通になるかは定かではないが、これらの4社で共通使用が可能なバッテリーと、その充電インフラがセットで普及するのなら、それは大きな進歩といえるだろう。PSR