韓国の車載電池大手が米国市場を攻略している。SKイノベーションがフォードと、LG化学がGMと組み、車載電池工場の建設を推進する。米中対立を背景に世界首位メーカーのCATLが踏み込めない米国市場で、韓国勢は顧客の取り込みで先行したい考えだ。SKは同工場に約3000億円を投じ、年産ベースでEV22万台分に相当する22ギガワット時の車載電池を作る計画だ。さらにフォードとの合弁計画では、両社で6000億円を投じて60ギガの巨大工場を建設する。

SKの2019年時点の年産能力は韓国工場のわずか5ギガのみ。中国とハンガリーの工場立ち上げで2020年に30ギガに拡大し、米工場が加わり2023年に85ギガに、さらにフォードとの合弁を加えて2025年には185ギガを上回る見通しだ。

後発SKの世界シェア(2020年)は5%で6位。持ち前の大胆な投資決断で上位浮上を急いでおり、80兆ウォン(約8兆円)の受注を得て米中欧3カ所で増産計画を推し進める。

急ピッチで投資拡大するのは2位のLG化学も同じだ。GMや現代自動車、中国吉利汽車、米テスラなど幅広い顧客から15兆円規模の受注残を確保したもよう。米国ではGMと提携し、オハイオ州とテネシー州に年産能力で各30ギガの合弁電池工場を設ける。

これら「米韓連合」づくりには脱中国という政治判断も影響する。1兆5000億円の投資計画を表明するCATLは広東省や福建省、四川省など中国に生産拠点を持つ。サプライチェーン(供給網)から中国を排除し、自国生産を推進するバイデン政権の意向も強く、米自動車メーカーにとっては中国以外のパートナーを探す必要があった。

韓国政府は車載電池を「第2の半導体」と位置づけ、自国経済の屋台骨である半導体に次ぐ主力製品に育てる意向だ。LGとSK、そして4位のサムスンSDIの世界大手3社を擁する強みを生かして電池産業の集積を目指す。

出典: 日経

PSR 分析: LG、SK、Samsungの韓国の電池メーカー3社に限らず、世界中の電池メーカーは生産能力を増強することで、CATLをはじめとする中国勢に対抗し、EV市場で主導権を狙う戦略だ。米中摩擦を背景に、中国勢が進出できない北米市場での需要を囲うことで、短期的には米欧の自動車メーカーからの受注が増えるだろう。しかし、韓国は安全保障で米国の同盟国でありながら経済的には中国との結びつきが強い。ちょうどよいバランスポイントを模索しているが、政治的な均衡が変動することはリスクにもなり得る。

現在ほとんどの車載電池メーカーは増産の方向でアクションしているが、現在の供給不足が解消された後、供給過多になるリスクはある。現在は需要が急増しているために誰もそのことには触れていないが、考慮すべき点だと私は考えている。PSR