7月1日、コマツは建設現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)のための新会社「EARTHBRAIN」を始動させた。現場のデータをデジタル化し、分析することで、大幅なコスト改善などにつながるサービスを提供する。

新会社の母体はコマツが2017年に設立したIoTのオープンプラットフォームの会社、ランドログだ。出資者を大幅に入れ替え、コマツのデジタル部隊のメンバーも一部移管する。

海外当局の認可を経てコマツが54.5%、NTTドコモが35.5%、ソニーセミコンダクタソリューションズと野村総合研究所(NRI)が5%ずつを出す予定。資本金は150億円超で、かなり本気度は高い。今回新たに加わったのが、ソニーやNRIだ。ソニーは画像センサーに強みを持つ。土量の変化などを認識する「目」の役割を果たす。NRIはデジタル化のソリューション開発などのノウハウを提供する。

建設現場では高齢化が進み、若年の労働者が不足している。建設技能労働者は数年以内に、必要数の3分の1に当たる最大120万人が足りなくなるとされる。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で、世界の建設現場で働き方改革が求められている。

同社は2000年代、世界中の建機の居場所をIoTで把握するシステム「コムトラックス」を導入したことで巻き返し、800億円以上の深刻な赤字から、僅か数年で330億円の営業黒字という、驚愕のV字回復を成し遂げた。その後時代は変わり、競争のスピードは速まっている。今回の新会社を機に、世界の現場のニーズを捉えていけるかどうかが、成長の鍵を握りそうだ。

出典: 日経ビジネス

PSR 分析: デジタル化自体は他社との差別化がしづらい分野である。だが、コマツにはKOMTRAXを普及させた大きな実績があり、コマツの次世代技術へのユーザーからの関心や期待値は非常に高い。

今回設立した新会社に参画したソニーはセンシング技術に定評があり、パートナーとしては適任だろう。NRIも同様にデジタル化のための産業ITソリューションに豊富な知見を持っている。

自動車業界と同様に、次世代機能の開発は、業界の巨人であるコマツといえど、もはや1社単独では難しい。高い技術力を持った専門性を持つ企業とタッグを組むことで、開発の加速と品質の向上を狙っていく方針だ。

私はコマツのこれらのアクションの結果が、次世代の建機の在り方のグローバルスタンダードになっていくという見方をしている。

コマツのライバルであるキャタピラーもデジタル化を推進しているが、他の建機メーカーもこの2社を追従する流れはさらに強まっていくだろう。異なるメーカーの機器同士の通信を可能にする規格も今後現れると予測している。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト