韓国SKグループが蔚山市に14万平方メートルの水素燃料基地を整備する計画を明らかにした。液体水素の生成工場を建設し、水素を燃料とした発電所も整備する。

ロッテケミカルも参画し、同市に水素関連産業の集積を進める狙い。SKガスが事業主体となってプロジェクトを推進する。同社は今後5年間で2兆2000億ウォン(約2160億円)を投資する計画で、水素エネルギー普及を見越した生成・貯蔵・運搬といったインフラを整える。2030年までには韓国内に水素充填所100カ所を構築する計画も明らかにした。

複合団地にはLNG船の受け入れ施設を建設し、LNGから水素を抽出し液化する設備も導入する。天然ガスを高温・高圧の水蒸気と反応させて水素を発生させる技術を使う。その過程で出るCO2を回収・貯蔵することで水素を生み出す。ロッテケミカルとは年内に水素関連技術の共同出資会社を設立する。

出典: 日経

PSR 分析: 2021年に入ってから韓国を観察するとほぼ毎月水素関連のニュースが見つかるが、特にSKの積極的な投資が目立っている。インフラ整備に今後5年間で18兆ウォン(1兆7,000億円)、米国の燃料電池メーカーであるプラグパワーにも1兆6,000億ウォンを出資している。蔚山市は現代自動車の旗艦工場があり、ここが韓国における水素事業の集積地になることはほぼ間違いない。

グローバルでFCVの成功事例を探すと、ZEV規制のカリフォルニア州と韓国が挙げられるだろう。ともに多くのFCVが走っている。今、FCVの実質的な選択肢はトヨタかホンダ、そして現代自動車となっている。今後は中国メーカーが追い付いてくるかもしれない。

乱暴な言い方だが、現在の欧州と米国は、ほぼEVに一辺倒という状況だ。日本と韓国が模索しているFCVはまだまだ普及ステージには至らないが、長期的見地に立った場合、こうした投資の努力が報われる日が来るのかもしれない。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト