コマツは2050年に二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを目指す。建設機械の製造時など自社で出す分だけでなく、販売先の顧客が使用時に出す分までを含めてゼロにする。建機の電動化や燃費改善を進めるほか、顧客の建機の効率運用を後押しするなどして達成を目指す。

ESG(環境・社会・企業統治)投資家が顧客企業の排出分も含めた削減を重視しているのに対応する。

同社はこれまで2030年にCO2排出量を2010年比で半減させる目標を掲げていた。建機の電動化や自動化で10~15%、製品の燃費改善や工場での排出削減で20~25%を削減する計画だ。現行計画を残しつつ、新たに2050年までの目標を設定する。

出典: 日経(一部筆者により元記事内容を改編しました)

PSR 分析: ゼロエミッションの波は建機セグメントにも及ぶ。この目標は一朝一夕には達成できない難しいものだが、業界リーダーであるコマツがこのような目標設定をした影響は他の建機メーカーにも波及していくだろう。

建機を生産・販売してから顧客が使用・廃棄するまでに排出されるCO2のうち、9割は工事現場での建機稼働時に発生する。

これらを全てゼロにするためには、記事にもある通り、工場での機器製造の在り方を見直すことから始まり、機器の電動化・自動化を推進していくことになる。2022年には世界初となるリチウムイオン電池で動く20トンクラスの電動機を量産する見通ししとのことだ。40トンクラスのショベルも開発に着手するほか、水素で動くダンプトラックも開発する。これは今後建機が進化すべき方向を示したものである。

2050年は遠い未来ではない。技術的にはこの目標を達成するためには向こう数年の間にいくつものイノベーションが必要であることは言うまでもない。

これは言わばJFKのムーン・スピーチであり、実現の可能性を論ずるタイミングはすでに去り、現実的な課題として、建機メーカーがCO2削減に真剣に取り組むべきである、と示したと解釈すべきだ。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト