Akihiro Komuro
小室 明大

インドネシア政府は2月5日にテスラから投資の提案を受け取ったことを明らかにした。同国はEV用バッテリーの生産に欠かせないニッケルの世界最大の産出国である。EVやバッテリー関連の産業を振興するため、テスラに投資を呼び掛けていた。

秘密保持契約があるため、詳細は明らかにできないが、主にバッテリーとエネルギー貯蔵ソリューションについて協議してきたという。インドネシアの次官は「テスラが原材料の購入だけを望むのであれば、われわれとしては関心がない。原材料の調達以上の提案であり、蓄電システムのメガパック、パワーパック、パワーウォールなどにも及んでいる」と述べた。

インドネシアは2020年にニッケルの輸出を停止した。採掘から加工まで一貫したニッケルのサプライチェーン体制を構築し、EVの需要に対応することを目指している。テスラは2020年、バッテリーのコストが依然として事業拡大のハードルになっていると指摘し、安定したニッケルの調達源を世界各地で探していることを明らかにした。

出典: ロイター日本語版(一部筆者により元記事内容を改編しました)

PSR 分析: テスラとの協議はまだ議論が始まった段階であり、詳細は未定だ。だが、EVバッテリーの原料となるニッケルの世界最大の産出国であるインドネシアは、昨年に輸出禁止の政策を発表した。それ以降、テスラに限らず多くの企業がインドネシアに生産拠点を設置する機会を模索し始めている。

韓国のLG Energy Solutionは2021年上半期にEVバッテリー工場建設を開始する予定だ。中国のCATLも、インドネシアの国営企業と協力して同様のプロジェクトを計画している。現代自動車も1.55bUSドルの投資を表明している。

Reutersのレポートによると、インドネシアはニッケルの生産能力を前年比46%増の55万トンに増加させている。バッテリーの主な原料はニッケルやコバルトがよく知られており、インドネシアはニッケルで世界1位の生産量、世界2位の輸出量を誇る。コバルトはコンゴが世界の60%を供給しているが、政情不安から、インドネシアでの採掘が期待されている。

自動車関連企業による資源確保の動きは今後さらに加熱し、それはインドネシアの国際的な重要度をさらに高め、同国の発展に貢献するだろう。インドネシアは大きな人口を抱えており、国内の自動車需要も旺盛だ。東南アジア全体ではコロナ禍の影響を受けてFDIは落ち込んでいるが、ことEVやバッテリー生産に関してはCOVID-19の問題の有無にかかわらず、今後さらに激化する。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト