現代自動車とアップルは自動運転EV分野での提携で正式合意する予定だ。韓国紙コリアITニュースが10日伝えた。先週、現代とアップルが2027年に自動運転EVの発表を目指していると別のメディアが報道。これを受け、現代自はアップルと初期段階の協議をしていると発表していた。(以上、Newsweekから抜粋)

現代は、中国のIT大手バイドゥ(百度)が進める自動運転EV戦略「アポロ計画」で中心的な役割を果たしている。

また、EVなど電動化についても積極的に量産している状況だ。EV開発で重要な電池については、韓国はドイツメーカー向けにサムスン電子、米国メーカー向けにLG化学と、2000年代後半から2010年初頭にかけて本格化した自動車向け大型リチウムイオン二次電池の開発・生産が盛んで、EVに対する充分な知見がある。

こうした韓国での社会状況を踏まえると、アップルが現代にEV生産を委託するという話は、自動車業界関係者にとって納得がいくところだ。そもそも、アップルは商品の企画と設計をおこない、生産は外部企業に任せる、いわゆるファブレス企業である。iPhoneを実際に生産しているのは台湾のフォックスコンであることはその好例だ。

アップルとしてはEVについても自社生産工場を建設せず、iPhoneなど既存商品と同様に生産の外注先を探すという図式を考えると、今回のヒュンダイとの連携の噂に真実味がある。(以上、くるまのニュースから抜粋)

出典: ニューズウィーク 、くるまのニュース(一部筆者により元記事内容を改編しました)

PSR 分析: 今日1月18日の時点では現代、アップル両社ともこの件についての正式な発表はしていないため、まだ真相は分からない。だが、4-5年ほど前から自動車業界は単独メーカーの開発から、センサー技術関連企業やマッピング技術関連企業などの代表されるIT企業との連携にシフトしており、この話はそうした潮流のなかでも大きな規模であるために報道は注目されている。

連携の詳細についてはまだ公開されていないため不明だが、記事の中でも説明されているように、現代にとってはアップルが持つ技術は自動運転分野だけではなく車内空間の利便性を高めるうえでも大いに役立つ。

アップルにとっては自動車生産を現代に委託することで大規模な設備投資費を抑制できるだけでなく、多くの地域に販売網を持つ現代と協力することで、自動車業界における国際的なプレゼンスをさらに高められる。

アップルがどこまで自動車にコミットするのかは重要な関心事だ。自動運転EVのコンセプトを包括的に管理して「Apple Car」としていくのか、あるいは現代へ一部の技術提供をするレベルに留まるのか。どのような収益体制を構築するのかも気になる。通常、センサー企業やマッピング企業が自動車メーカーと組んで利益を上げるためには、1台当たりのいわばライセンス収益が主となるが、自動車そのものの販売台数がCOVID-19や他の多くの理由によって伸びにくい状況で、どのように安定的な収益を確保していくか、様々な案が検討されているだろう。自動車メーカーに技術を提供するIT企業にとっては、いわゆるサブスクリプションフィーのかたちで契約するトレンドが今後伸びていくと筆者は予測しているが、IT企業にとっても自動車メーカーにとっても、利益の確保は大局的にはEVの販売台数に依存する。

他社との差別化をどのように図るか、それは航続距離や運動性能だけでなく、利便性や居住空間の快適さなどの利便性が求められていく傾向が今後は顕著になっていくだろう。IT業界における巨人であるアップルがどのようなかたちで自動車業界におけるプレゼンスを高めていくのか、現代という韓国を代表する自動車メーカーがアップルの技術をどのように自動車のかたちに完成させていくのか、両社の動きは今後のEVの在り方に一石を投じる。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト