Akihiro Komuro
小室 明大

コマツは排ガスを出さない電池駆動の小型ショベルを2022年に欧州で発売する。静音性の高さも訴え、住宅地での利用を見込む。日立建機も電動のショベルの受注を2021年度は前年度の2倍に増やす。自動車に続いて建設機械の分野でも、開発競争が本格化してきた。

コマツが売り出す小型ショベルは、軽量で長く稼働できるリチウムイオン電池を使う。エンジンの代わりにモーターを使い、騒音が少なく排ガスも出ない。まず建機の環境規制が厳しい欧州で売り出し、日本での投入も検討する。20年4月に日本で鉛蓄電池で動く小型ショベル数台を試験的にレンタルしている。

電動化に特化した開発部署として、100人規模の「電動化開発センター」を2020年4月に設けた。中大型建機の電動化開発にも注力し、原価や出力、バッテリー重量などの課題を解決する。

出典: 日経(一部筆者により元記事内容を改編しました)

PSR 分析: 乗用車よりも大きなパワー出力が必要な建機にも電動化に動きが本格化しつつある。業界リーダーであるコマツはまず、世界で最も環境規制が厳しいことで知られる欧州市場での電動建機を投入し、そこで市場の評価を得た後で、次に日本や北米を含む他のリージョンへ展開する戦略を取っているように見える。

日立建機やボルボなどのメーカーでもまだ小型建機の電動化は開発途上の段階だ。やはり自動車とは異なり、より大きなパワーが求められる建機分野においては乗用車の電動化とは違った難しさがある。

作業の途中で充電したくても、工事現場付近に充電インフラがない、この問題は大きな課題だ。

長期的には電池自体の性能は向上していくだろうが、その発展が途上にある段階では、駆動時間が問題視される。これを解決するために、ポータブル発電機の需要が伸びることも考えられる。コマツを筆頭に多くの建機メーカーでは、小型のミニショベルはバッテリー電動、中・大型ショベルはハイブリッド、さらに大きな鉱山機械ではディーゼルエンジンで発電機を駆動して電気を作るディーゼルエレクトリック方式、という3種類が現実的と考えているようだ。

中国市場は世界で唯一、COVID-19のショックから急速に回復しているが、この流れは長くは続かないと筆者は見ている。依然としてCOVID-19問題は終わりが見えないが、ウイルスが建設需要全てを消滅させることはない。いわば建機の電動化はまだ黎明期だが、環境規制は今後より厳しくなることが確実視されている状況の中で、電動化は建機にとっても避けられない。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト