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突然の発表で、誰も予期できなかった商用車再編となった。5月30日、トヨタ自動車と独ダイムラートラックが商用車分野で提携し、トヨタ傘下の日野自動車とダイムラー傘下の三菱ふそうトラック・バスを2024年末に経営統合することを発表した。

トヨタとダイムラーが株式公開を目指す持ち株会社を2024年末までに設立し、日野自と三菱ふそうが傘下に入ることで4社が基本合意。トヨタとダイムラーの持ち株会社への出資比率は同じ割合とし、統合後に日野自はトヨタの連結子会社から外れる。

経営統合後も日野ブランドとふそうブランドは残ることになるが、これにより、いわゆる「大型4社」として長く続いていた日本のトラックメーカーの構図は、日野自・三菱ふそうと、それに対するいすゞ自動車・UDトラックスの2陣営に集約されることとなった。

この商用車再編に結びついたのは、何といっても日野自のエンジン不正問題だ。2022年3月に発覚した日野自による排ガスデータの改ざん問題は傷口が大きく広がり、2000年代初頭にまでさかのぼって不正が続いていたことまで判明してしまった。トラック・バスの国内出荷停止やブランドの毀損によって、日野自の2023年3月期の連結最終赤字は1176億円と過去最大の赤字となり、最終赤字は3期連続となっていた。国内だけでなく米国など海外での不正の有無も調査段階にあり、窮地に陥っていた日野自を、50.1%出資する親会社のトヨタがどう支えていくかということは、かねての課題だった。統合スキームは、新たに持ち株会社を設立して日野と三菱ふそうをそれぞれ完全子会社とする。持ち株会社は日本で上場し、トヨタとダイムラートラックの持ち分比率は同割合とする。2024年3月期中の最終契約締結、2024年中の統合完了を目指す。

参考: Diamond Online

PSR 分析: 日野は2022年3月にエンジン不正が発覚して以来窮地に陥っていた。顧客からの信用の失墜、国交省からはエンジン量産に必要な型式認定を取り消されている。リコール費用をはじめとする特別損失を計上した結果、3期連続の赤字だ。このように不正問題への対応をせざるを得ない一方で、トラック分野におけるCASEへの取り組みも行わなくてはならない。だが、トヨタやいすゞによる中小型トラックのCASE技術を開発する合弁会社CJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)からは除名されている。さらに、4月にはVWグループ傘下のトレイトンとの技術開発の提携も解消した。

FCVの開発はいわば商用車メーカーの悲願と言ってもいいだろう。一社単独では開発コストを担えず、その意味で今回の経営統合は日野にとっては今後を左右する重要な節目だったはずだ。トヨタだけで日野を支えていくには限界がある。一方で水素技術においてトヨタは先行しており、こうした知見をダイムラーとシェアすることで、より開発は加速するだろう。ブランドの存亡と技術開発の節目として、今回の経営統合は、日本のトラックメーカーにとって大きな岐路になる。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト