東南アジア > ベトナムレポート:
Akihiro Komuro
小室 明大

ベトナムの複合企業最大手ビングループの自動車子会社、ビンファストは7月初旬にガソリン車2種の受注を終了したことを明らかにした。対象はSUVとセダンで、同社が販売するガソリン車は小型車のFadilのみになる。同社は年内にガソリン車の生産から撤退する方針を打ち出しており、EV生産へのシフトを急ぐ。

ビンファストは2車種の受注停止の理由について「部品の調達が困難になり、顧客に納入した台数が予想より多くなかったため」としている。ファディルの受注停止の時期には言及していない。同社は2021年12月にベトナム国内でEVの販売を始めた。現在は小型SUVのみだが、22年内に大型SUV2車種を加える予定だ。欧米市場でも1月からEVの受注を開始しており、米国東部のノースカロライナ州ではEVの新工場を2024年に稼働させる方針で準備を進めている。ビンファストが発表した1~6月の自動車の新車販売台数は1万4695台。このうち、EVは2141台だった。

出典: 日経

PSR 分析: EVと比較して部品点数が多いガソリン車は、何千とある部品のうち、たったひとつでも不足すると完成しない。世界的に部品調達に問題が出ている今、EVへの切り替えは合理的な判断と言えるだろう。もちろん、EVにも部品不足の問題はあるが、相対的に見てEVの方が部品調達リスクを低減できることは明らかだ。

新興メーカーであるビンファストの販売台数は順調に伸長しており、米国などにも販売網の展開を行っている。上記記事にもある米国工場については、ノースカロライナ州政府から受け取るインセンティブが総額12億ドル相当になることを明らかにした。インセンティブパッケージには雇用開発投資補助金や、工場建設予定地のインフラ整備、人材育成費用などが含まれる。同州はクリーンエネルギーを積極的に推進しており、過去最大のインセンティブ提供になる。彼らの米国での存在感は増していく。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト