東南アジア > インドネシアレポート:
Akihiro Komuro
小室 明大

コマツは2022年春からインドネシアでハイブリッド方式の建設機械の投入を始めた。電気で動くモーターも動力源に備え、燃費を従来機より2~3割改善できる。中国勢が低価格攻勢をかけ、インドネシアを牙城とするコマツにシェアで匹敵するようになってきた。燃料代が急上昇するなか、新興国でも環境意識が高まっている。燃費性能の高い建機で中国勢の追撃をかわし、脱炭素の需要を掘り起こす。

東南アジア最大の建機市場インドネシアで、ハイブリッドの油圧ショベルを売り出した。自社開発のハイブリッドシステムを搭載し、旋回装置を電動化した。アームや運転席を含む車体を左右に旋回させる際、減速時に発生するエネルギーで電気をつくり、蓄電装置にためる。車体の旋回時にはその電気を使い、エネルギー効率を高める。電気自動車(EV)電池向けに需要が伸びるニッケルの鉱山開発事業者などに売り込む。

売れ筋の車体重量30トン級にハイブリッドモデルを投入した。価格は1台数千万円程度で、通常のディーゼルエンジンの油圧ショベルより2~3割程度高くなる。

ニッケル鉱山で使うショベルは、鉱石を掘ってダンプトラックに積み込む作業での左右への旋回動作が多く、ハイブリッド導入による燃費改善効果が大きい。「足元の燃料費高騰を考えれば、価格上昇分を数年で回収できる」(小川啓之社長)としている。

出典: 日経

PSR 分析: 建機の電動化は自動車の電動化とはまったく異なる。異なる点を挙げればきりがないほどだが、使い勝手という意味では充電インフラの有無だ。建機が動く工事現場では、発電機を持ち込まない限り充電インフラは無い。また、あったとしても、1日8時間稼働すると仮定しても、フル稼働で8時間を高出力し続けられるバッテリーは現時点では存在しない。だがハイブリッドであればそうした弱点を克服し、対環境性能の向上、燃費性能の向上を狙える。

これまでコマツはハイブリッド建機を東南アジアでは本格的に展開していなかった。だが現地でも環境意識は高まり、政府は2060年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標に掲げた。インドネシアは従来からコマツの牙城だったが、SANYなどの中国勢が販売を伸ばしており、シェアは同水準にあると見られる。今後競争が激化することは確実だ。PSR

小室 明大 – 極東及び東南アジア リサーチアナリスト